インスリンの分泌と働き

 食べ物が腸に到達すると膵臓のランゲルハンス島からインスリンが分泌されてきます。肝臓ではインスリンがブドウ糖をグリコーゲンに変換させることで血糖値を下げます。末梢の筋肉ではインスリンの作用により筋肉細胞内にブドウ糖は取り込まれ、内臓脂肪ではブドウ糖を細胞内に取り込み、中性脂肪として蓄えます。

 ブドウ糖の口から摂取した時と、点滴静注を行った時のインスリンの分泌のされ方の違いから、腸管にはインクレチンと呼ばれる腸管ホルモンの存在が注目されています。まだ十分に解明されていませんが、食べ物の種類や量などでも胃から腸への食べ物の流入速度を変えたり、インスリン分泌の反応、分泌量などに影響を与えるとされています。

インスリン感受性

 インスリンの存在が直接ブドウ糖代謝に作用はしていません。多くの細胞内にブドウ糖はインスリンの存在なしに取り込まれますが、食後の血糖が増えた際には、大量の糖を細胞内に取り込むために骨格筋や内臓脂肪では細胞膜上に糖を輸送させる蛋白が現れます。インスリンはこの蛋白の働きに関与していると言われています。なぜ大量のインスリンがブドウ糖を細胞内へ輸送させるために必要になるのかは十分に解明されていませんが、年齢を重ねることで、細胞膜上の糖輸送蛋白自体が減少すると言われている一方、腸間膜細胞や内臓脂肪脂肪から分泌される炎症惹起物質などがインスリンの働きを鈍くさせているとされ、肥満や運動不足がインスリンの抵抗性を高めているとされています。メタボリックシンドロームの状態では、内臓脂肪細胞から分泌されているアディポネクチンが減少していることもインスリン抵抗性を高めているとされています。

インスリン抵抗性の測定

 インスリン抵抗性はHOMA-R(早朝空腹時の血糖値とインスリン値から計算される指標)で示されます。空腹時血糖値が140mg/dl以下で計算され、2.5以上では抵抗性があるとされます。

インスリン抵抗性の改善

 インスリン抵抗性を改善させるためには運動が最も効果があります。運動はインスリン抵抗性の改善だけでなく、筋肉自体大量のエネルギー消費を伴い、血糖値低下に効果があります。しかし、運動による効果は一日程度しか持続しません。肥満がインスリン抵抗性を高める原因であることから、当然、減量もインスリン抵抗性を改善する効果がありますが、効果発現までには時間が必要です。