糖尿病への誤解

糖尿病には非常に多くの誤解があります。

  1. 尿に糖が下りていないから大丈夫。
  2. 甘い物を食べ過ぎていないから大丈夫。
  3. 焼酎やウイスキーは糖を含んでいないから糖尿病になりにくい。

などなど、先ず、糖尿病そのものの病態がよく分からない(医療関係者でも分かりにくい)ために生じた誤解があります。

エネルギーとしてのブドウ糖

 ブドウ糖は全ての臓器でエネルギーの素となります。特に脳神経ではブドウ糖を唯一のエネルギー源としていますので、ブドウ糖が枯渇する(低血糖状態)と働くことが出来なくなります。

動物としてのヒト

 常に捕食できる動物はさほど多くありません。常に飢餓と隣り合わせに生活をしてきました。ヒトでも例外ではありませんでした。今でも一部の地域(我々日本人を含む)の人々を除き、貧困、飢餓と隣り合わせの状態です。このため、低血糖状態にならないようにすることが、生命維持には非常に大切で、血糖を上げるための仕組みはたくさん準備されていますが、高血糖にならないようにする仕組みはインスリンを作用させることだけです。

糖尿病とインスリン

 血糖値を上げないようにするための仕組みであるインスリンは、血糖値が上がると膵臓から血液中に分泌されます。I型糖尿病(以前は若年型といっていた)では、何らかの理由で膵臓からインスリンが分泌しなくなってしまい発症します。従ってインスリンの補充は必須です。一方、II型糖尿病では内臓脂肪細胞から分泌されるTNF-αが先ずインスリンの作用を弱め、この結果膵臓はインスリンを沢山分泌しざるを得なくなります。

健康診断でHbA1cの値が5.6%以上で糖尿病の疑いがあると判定されたが、診療所または病院で再検査を受けたら、検査が6.2%以下で基準値内に入っていると言われた経験のある方も多いと思われます。これは健康診断の異常値の値が低すぎるのでしょうか。無理に病気を作っているのでしょうか?

血糖値は食事、飢餓時に関わらずなるべく一定に保たれるべきなのです。HbAc1の値が5.6%以上の場合、空腹時と食後で血糖値の差が非常に大きくなっている(食後高血糖状態)可能性が高いと言われています。特に血糖値が正常でもインスリン分泌量が増えていると近い将来にはインスリン分泌反応の遅延、あるいは分泌が減少して糖尿病状態になる危険性が非常に高いとされています。従って、糖負荷試験を行って血糖値とインスリン値を経時的に検査する必要があります。